INTRODUCTION

恋人に会うため、
自身がアート作品になった
男の数奇な運命―
第93回アカデミー賞®国際長編映画賞ノミネート、第77回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門男優賞受賞ほか世界中で話題を呼んでいる本作は、芸術家ヴィム・デルボア氏が2006年に発表した作品「TIM」に影響を受け、ハニア監督がオリジナル脚本として書き上げた。人間の本質をユーモアも交えて描いた本作は昨年東京国際映画祭でも上映され、「大傑作」「監督は天才か?」「最大級の驚き」「予想もつかない結末」と評判を呼び多くの劇場公開を望む声が挙がった。

キャストには、普段はシリアで弁護士として働いており、ほとんど演技経験がないヤヤ・マヘイニが映画初出演にして主演を務めた。そのほかには、『007 スペクター』(15)、『オン・ザ・ミルキー・ロード』(16)のモニカ・ベルッチ、『Uボート:235 潜水艦強奪作戦』(20)のケーン・デ・ボーウ、更には本作に影響を与えた芸術家ヴィム・デルボアも挑発的な役どころを演じている。監督を務めるのは、『Beauty and the Dogs』(17)でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され音響賞を受賞し、過去にもアカデミー賞®国際長編映画賞のチュニジア代表に選ばれたことがある実力派、カウテール・ベン・ハニア。

NOTE
本作は芸術家ヴィム・デルボア氏が2006年に発表した作品「TIM」に影響を受けた。この作品は2008年に個人のアートコレクターに購入されており、彼の死後はその背中の実物をアート作品として提供する契約を結んでいる。なお、ヴィム・デルボアは本作に、保険業者役で出演している。
〈DIRECTOR’S MESSAGE〉
主人公のサムは自分の背中を「アート作品」として売ることで、思いも寄らない形で現代美術の世界へ足を踏み入れます。ファウストが悪魔と契約したように、恵まれた人と呪われた人とが契約を交わしたのです。現代美術と難民はまったく異なる世界ではありますが、このふたつの世界が映画の中で対比されることで“自由”について考えさせられる作品となっています。
〈ABOUT ヴィム・デルボア〉
ヴィム・デルボア

ベルギーのネオ・コンセプチャル・アーティスト。豚にタトゥーを入れた「Art Farm」(92-97)、排泄装置「Cloaca」(00-07)、など物議を醸す作品を発表する一方、ゴシックやバロックなどの古典的な芸術様式を取り入れるなど多岐にわたる作品を発表している。2014年にはヨコハマトリエンナーレにも出品。本作では美術展で撮影協力や、脚本を読み現代アートへのアプローチについてアドバイスしたほか、自身も映画への参加を希望。保険業者の役で参加している。完成した映画を見たヴィムはどれだけ映画を気に入ったかを、監督に電話で二時間にも渡り話した。

STORY

シリア難民のサムは、偶然出会った芸術家からある提案を受ける。それは、大金と自由を手に入れる代わりに、背中にタトゥーを施し彼自身が“アート作品”になることだった。美術館に展示され世界を自由に行き来できるようになったサムは、国境を越え離れ離れになっていた恋人に会いにいく―しかし、思いもよらない事態が次々と巻き起こり、次第に精神的に追い詰められてゆく。世界中から注目されるアート作品“サム”を待ち受ける運命とは…。

CAST PROFILE

ヤヤ・マヘイニ Yahya Mahayni
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ヤヤ・マヘイニ Yahya Mahayni
シリア出身。シリアとカナダを行き来しながら育ち、スペインのグラナダ大学の法学部で法律を学んだ後、俳優学校へ入学。実生活では弁護士をしながら、『Al en vers』(15)『Bengué』(19)などいくつかの短編映画に参加した後、デモテープでのオーディションを経て本作への出演が決まった。
【出演作】『Al en vers』(15)、『Opium』(16)、『Bengué』(19)
ディア・リアン Dea Liane
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ディア・リアン Dea Liane
フランスで舞台女優として活躍しており、映画は本作が初出演となる。また、2020年にはフランスで公開された『Retour à la nuit』(20)で長編映画初主演を果たした。
【出演作】『Retour à la nuit』(20)
ケーン・デ・ボーウ Koen de Bouw
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ケーン・デ・ボーウ Koen de Bouw
1964年9月30日生まれ。ベルギー出身。
【出演作】『サバイバル・ゲーム』(00・未)、『ザ・ヒットマン』(03・未)、『ロフト.』(09) 、『プライム・ターゲット』(16)、『アンノウン・ボディーズ』(17)、映画『Uボート:235 潜水艦強奪作戦』(20)
モニカ・ベルッチ Monica Bellucci
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モニカ・ベルッチ Monica Bellucci
1964年9月30日生まれ、イタリア出身。
【出演作】『ドラキュラ』(92)、『ドーベルマン』(98)、『マレーナ』(01)、『アレックス』(03)『マトリックス リローデッド』(03)、『マトリックス レボリューションズ』(03)、『シチリア!シチリア!』(10)、『魔法使いの弟子』(10)、『007 スペクター』(15)、『男と女 人生最良の日々』(20)
ヴィム・デルボア Wim Delvoye
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ヴィム・デルボア Wim Delvoye
1965年1月14日生まれ、ベルギー出身。
壁紙やカーペットに直接描いた絵画を制作していたが、徐々に制作の背後にある理論への興味に惹かれていき、92年のドクメンタ9で、自分自身の排泄物の画像を焼き付けたタイルをモザイク状に並べた「Mosaic」を発表して、国際的な注目を集める。排泄装置「Cloaca」や豚にタトゥーを入れた「Art Farm」といったシリーズも含め、挑発的かつ物議を醸す作品が少なくない。本作のモチーフになっている「Tim」という作品も実際に人間にタトゥーを彫り、アート作品としてコレクターに売却され大きな議論を呼んだ。これまでベルギーに住んで作品を制作していたが、豚にタトゥーを施した「ピッグ・タトゥープロジェクト」が裁判で違法という判決を下されたあと中国に移住。日本では2014年に現代美術の国際展覧会のヨコハマトリエンナーレに参加した。

STAFF PROFILE

監督・脚本:カウテール・ベン・ハニア
KAOUTHER BEN HANIA
1977年8月27日生まれ、チュニジア出身。チュニジアとパリで映画を学んだ。

【Filmography】
『Imams go to School』(10) 国際ドキュメンタリー・フェスティバル・アムステルダム(IDFA)正式出品 ※ドキュメンタリー
『Le Challat de Tunis』(13) 第67回カンヌ国際映画祭ACID部門オープニング作品 ※初長編監督作
『Zainebhatest the Snow』(16) 第27回カルタゴ映画祭 長編映画賞受賞 ※ドキュメンタリー
『Beauty and the Dogs』(17) 第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門 正式出品
撮影監督:クリストファー・アウン
Christopher Aoun
1989年、レバノン出身。ベイルートのサンジョゼフ・ド・ベイルース大学とミュンヘンテレビ映画大学で映画撮影を学ぶ。2019年には『存在のない子供たち』でドイツカメラアワードを受賞している。映画芸術科学アカデミー会員。

【Filmography】
『Listen』(17/フィリップ・アラクティンギ監督)撮影
『Kalveli - Shadows of the Desert』(18/フランチェスカ・シェーネンベルガー監督ほか)撮影 ※ドキュメンタリー
『存在のない子供たち』(19/ナディーン・ラバキー監督)撮影
『Die Frau des Piloten』(21/アンネ・ツォーラ・ベラシェド監督)撮影